最終更新:2025年11月6日

「一度は、ゆっくり京都を旅してみたい」
「でも、京都といえばお寺や神社。あそこは砂利道(じゃりみち)や急な階段ばかり…。足腰に自信がないし、ましてや車椅子では無理よね…」

そんな不安から、京都旅行そのものを諦(あきら)めてしまっていませんか?

せっかくの京都なのに、駐車場から本殿まで延々と続く砂利道に車椅子のタイヤが取られたり、目の前に現れた石段にため息をついたり…。そんな「疲れる」旅行は、もうしたくありませんよね。

この記事は、まさにそんな足腰に不安があるシニア世代や、車椅子をご利用のご家族と旅行される方へ向けて、「“歩かない”で楽しむ京都」を徹底的にご提案するモデルコースです。

「観光タクシー」やレンタカーを賢く活用することを前提に、数ある寺社仏閣の中から、「金閣寺」や「二条城」など、車椅子でも境内に入りやすく、バリアフリー対応が比較的進んでいるスポットを厳選。

さらに、「車椅子用トイレの有無」「駐車場から本殿までの具体的な距離や段差」といった、シニアの皆さんが本当に知りたい情報を、とことん詳しく解説します。

—お香のいい香りが漂うお堂のそばまで、車椅子でたどり着ける。そんな、誰もが快適に楽しめる京都の旅を、一緒に計画していきましょう。

1. 京都観光の壁(砂利・階段・歩行距離)

50代・60代になり、時間ができて、ようやく憧れの京都へ。「でも…」と、ためらってしまう一番の理由。

それは、「京都 = とにかく歩く」というイメージではないでしょうか。

きらびやかな金閣寺、荘厳な二条城…。素晴らしい場所であるほど、駐車場から遠かったり、門をくぐった先には、車椅子のタイヤや杖(つえ)を取られる「砂利道(じゃりみち)」がどこまでも続いていたり。

そして、本堂や本殿の前には、決まって「急な石段」がそびえ立っている…

あの、車輪が砂利に沈む「ジャリジャリ…」という重いや、目の前の階段を見上げた時の、あの「ここまで来たのに…」という、ため息。

せっかくの旅行で、そんな思いはしたくありませんよね。

この記事は、「京都には行きたい。でも、歩くのは不安」という、すべてのシニア世代、車椅子をご利用の方、そしてそのご家族のための記事です。

結論から言います。
京都は、工夫次第で「歩かずに」楽しめます。

問題なのは「京都」ではなく、「バスや電車を乗り継ぎ、徒歩で巡る」という、今までの観光スタイルなんです。

この章では、まずその「京都の壁」の正体をはっきりさせ、次に、その壁をいとも簡単に乗り越えるための「3つの鉄則」をご紹介します。

1-1. なぜシニア・車椅子だと負担が大きいのか

まず、敵を知ることから、です。

京都がなぜ、足腰に不安のある方や車椅子にとって「負担が大きい」のか。それは、多くの寺社仏閣が「バリアフリー」という概念が生まれる、ずっと昔(数百年〜千年以上前)に造られた場所だからです。

具体的には、以下の「3つの壁」が立ちはだかります。

① 砂利(じゃり)の壁
これが最大の難関です。参道を「歩く」分には風情がありますが、車椅子にとっては「ぬかるみ」と同じ。タイヤが沈んで、介助の方が押すのにも、ものすごい力が必要になります。杖(つえ)も、砂利に突き刺さってバランスを崩しやすく、非常に危険です。

② 階段・段差の壁
多くのお寺は山の中腹に建てられていたり、本堂が「高い場所」に設(しつら)えられていたりします。スロープ(傾斜路)が整備されていない場所も、まだまだ多いのが現状です。

③ 距離の壁
「金閣寺」や「二条城」のように、世界遺産クラスの場所は、とにかく「敷地」そのものが広大です。駐車場から門までが遠く、門から本殿までも、さらに歩く必要があります。

行動のアドバイスとして、これらの壁に「真正面から立ち向かおう」としないことが肝心です。
例えば、砂利道なら「砂利のない脇道(わきみち)や舗装(ほそう)路」を知っておく。階段なら「階段の手前(本堂の下)まで」で良しとする、あるいは「スロープのある裏口」を知っておく。

そう、「頑張らない」ことこそが、京都を楽しむ一番の近道なんですよ。

京都観光の「3つの壁」と、シニア・車椅子への具体的な影響
京都の壁 具体的な内容 シニア・車椅子への影響
① 砂利(じゃり) 寺社の参道、境内(けいだい)の多くが、玉砂利(たまじゃり)敷き。 ・車椅子のタイヤが沈み、自走も介助も非常に困難。
・杖(つえ)や歩行器が安定せず、転倒のリスクが高い。
② 階段・段差 山門(さんもん)への石段、本堂への高い敷居(しきい)、お堂と廊下の間の小さな段差。 ・スロープ未設置の場所が多く、車椅子では「その先」に進めない。
・小さな段差の連続が、足腰の疲労を蓄積させる。
③ 距離 駐車場から門までが遠い。敷地そのものが広大。バス停から寺社までも坂道。 ・拝観(はいかん)する前に、移動だけで体力を使い果たしてしまう。
・「ちょっと休憩」できるベンチが少ない。

1-2. 「歩かない」で楽しむ3つの鉄則

では、その「3つの壁」を、どうやって乗り越えるか。

答えは、「頑張って乗り越えない」ことです。

バスや電車を乗り継ぎ、人ごみをかき分けて歩く…という、一般的な京都観光の「常識」を、一度すべて捨ててください。

その代わりに、シニア世代の京都旅行を成功させる、「3つの鉄則」をご提案します。

鉄則①:移動は「観光タクシー」を前提にする
これが、この記事の「核」となる最強の解決策です。バスや電車での移動は、乗り場までの移動、待ち時間、混雑、乗り換え…と、それ自体が大変な重労働。
その点、観光タクシーなら、宿の玄関から、お寺の「門の目の前」まで、ドア・トゥ・ドアで運んでくれます。運転手さんがバリアフリー情報にも詳しいため、「あそこはスロープがありますよ」と案内までしてくれます。

鉄則②:スポットを「徹底的に厳選」する
「せっかく来たから」と、清水寺も金閣寺も嵐山も…と欲張ってはいけません。1日に巡るのは、多くても「2つか3つ」まで。それも、「車椅子でも拝観しやすい場所(セクション3で紹介)」を、あらかじめ厳選しておきます。

鉄則③:「バリアフリー情報」を“知ってから”行く
「車椅子用トイレ」はどこにあるか? 「スロープ」はあるか? 砂利道を通らない「裏ルート」はあるか?
こうした「情報」こそが、杖(つえ)や車椅子の代わりになる、「最強の武器」です。

この3つの鉄則を守るだけで、京都旅行の負担は、驚くほどゼロに近くなりますよ。

シニア・車椅子旅行を成功させる「3つの鉄則」

  • 鉄則①:移動は「観光タクシー」または「レンタカー」を前提にする
    • バス・電車・徒歩での移動は体力消耗が激しいため、原則として避けます。
    • 「観光タクシー」なら、寺社の門の目の前まで乗り付けられ、乗降の介助も期待できます。(詳しくは『2. 最強の味方「観光タクシー」活用術』で)
  • 鉄則②:スポットを「徹底的に厳選」し、欲張らない
    • 1日に巡るのは、バリアフリー対応が進んだ寺社を「最大2〜3箇所」に絞ります。
    • 「清水の舞台(階段)」など、難しい場所は「下から眺めるだけ」と割り切る勇気も大切です。
  • 鉄則③:「車椅子トイレ」「駐車場からの距離」「段差」の情報を“知ってから”行く
    • 行き当たりばったりは、失敗のもと。
    • この記事や、各寺社の公式サイトで「多目的トイレの場所」「スロープの有無」を事前に必ず確認します。
キャラクター
「そうなんです、京都観光は『歩くのが当たり前』という常識を疑うことから始まります。最強の味方、『観光タクシー』を使いこなすのがコツですよ!」

2. 最強の味方「観光タクシー」活用術

『1. 京都観光の壁』で、京都観光には「砂利・階段・距離」という3つの大きな壁がある、とお話ししました。

では、その高い壁を、どうやって乗り越えるのか。

戦う(=無理して歩く)のではなく、賢く「飛び越えて」しまいましょう。

そのための“最強の翼”が、今回の記事の主役である「観光タクシー」です。

「え、タクシー? 流し(ながし)のタクシーを捕まえるの?」
「京都のバスや電車は安いのに、タクシーなんて贅沢(ぜいたく)よ」

そう思われたかもしれません。ですが、シニア世代が使うべき「観光タクシー」は、駅前で手を挙げて乗るタクシーや、バス・電車とは、まったくの別物なんです。

これは、「移動手段」ではなく、「バリアフリー情報に精通した、専属の地元ガイド付きの快適な車」を、時間で「貸し切る」サービスです。

京都駅に着いたら、人混みの中を荷物や車椅子を持ってバス停に並ぶ必要はありません。予約したタクシーが、静かな専用乗り場で待っててくれます。

フワリとしたシートの心地よい手触りを感じながら、空調の効いた車内で「次は金閣寺までお願いします」と告げるだけ。この「ストレス・ゼロ」の体験こそが、旅の質を何よりも高めてくれるんです。

この章では、その具体的なメリットと、一番賢い「予約の仕方」を詳しく解説していきますね。

2-1. おすすめ理由と料金目安・メリット

なぜ、私がここまで「観光タクシー」を強くおすすめするのか。

それは、『1. 京都観光の壁』でお話しした「砂利・階段・距離」の3つの壁を、すべてのお寺で、たった一つの方法で解決できるからです。

① 距離の壁:宿のロビーから、お寺の「門の目の前」まで、文字通り“ドア・トゥ・ドア”です。バス停から10分歩く…という苦労が一切ありません。

② 砂利・階段の壁:観光タクシーの運転手さんは、京都のバリアフリー情報のプロです。「あそこのお寺は、正面の門は砂利ですが、裏手の〇〇駐車場に停めれば、スロープで本堂のそばまで行けますよ」という「裏ルート」を熟知しています。

③ 疲労の壁:これが一番大きいかもしれません。拝観が終わってクタクタになった時、バスや電車で宿まで帰ることを想像してみてください…。もう、考えるだけで疲れてしまいますよね。
観光タクシーなら、門を出たらすぐに「お疲れ様でした」と冷房(暖房)の効いた車が待ってくれています。この安心感が、次の観光地への活力を生むんです。

行動のアドバイスとして、料金を比較する時は、バス代や電車代と比べないでください。
「ご夫婦(またはご家族)が、その旅行で失う“体力”と“時間”」も含めて比べてみてください。そう考えれば、「3時間コース 15,000円~」という料金は、決して高すぎる「贅沢」ではなく、快適な旅に必要な「投資」だときっとご理解いただけるはずです。

観光タクシー(時間貸切)のメリットと料金目安
項目 内容
メリット①
(ドア・トゥ・ドア)
・宿の玄関 → 寺社の「最短入口」まで、一切歩かずに移動できる。
・バス停や駅までの移動、待ち時間、混雑がゼロになる。
メリット②
(プロの知識)
・運転手さんがバリアフリールート(スロープ、舗装路、車椅子用トイレの場所)を熟知している。
・「清水寺の坂の上」など、一般車が入れない場所まで入れる許可を持っている場合がある。
メリット③
(体力温存)
・駐車場を探す手間がゼロ。
・拝観中も待機してくれるため、荷物や車椅子(折りたたみ時)を車に置いておける。
・疲れたら「少し早めにホテルに戻る」など、自由に予定を変更できる。
料金目安(貸切) 3時間コース: 約 15,000円 ~ 20,000円程度
5時間コース: 約 25,000円 ~ 35,000円程度
(※普通車・1台あたりの料金。会社や車種(ワゴンなど)により変動します)

2-2. 予約時に伝える要点と会社選び

では、どうやってその「最強の味方」を予約すればいいのでしょうか。

ここで絶対に間違えてはいけないのが、「当日に、京都駅で流しのタクシーを捕まえればいいや」とは思わないことです。

それでは、ただの「移動」になってしまいます。バリアフリールートの知識が豊富な運転手さんや、車椅子対応の車(ユニバーサルデザインタクシー)を確実に手配するには、必ず「事前の予約」が必要です。

会社を選ぶ際は、ネットで「京都 観光タクシー」と検索し、さらに「バリアフリー」や「車椅子」「UDタクシー(ユニバーサルデザイン)」といった言葉を付け加えて検索します。

「車椅子ごと乗れるリフト付きワゴン(福祉タクシー)」を専門にしている会社もあれば、「通常のセダンタイプだけど、運転手さんがバリアフリー研修を受けている」という会社もあります。

そして、予約時に一番大切な「魔法の言葉」。それは、下のリストにある「伝えるべき要点」を、具体的に、すべて伝えることです。

「金閣寺に行きたい」だけではダメなんです。
車椅子を1台利用します。歩行は困難です。金閣寺に、車椅子でも拝観できるルートで行きたいです
ここまで伝えて、初めて「プロ」のドライバーさんが手配されます。

行動のアドバイスとして、ネット予約を済ませた後でも、一度は電話をかけることを強く推奨します。 ネットの文字情報だけでなく、電話口でスタッフの方の「承知いたしました」という温かいを聞く。この「安心感」こそが、旅の準備の第一歩ですよ。

【必須】観光タクシー予約時に「必ず伝える」要点リスト

  • ① 日時と場所:利用したい日時、お迎えの場所(例:京都駅八条口、〇〇ホテルロビー)。
  • ② 人数と車椅子情報
    • 合計の乗車人数(例:本人、介助者、家族の計4名)。
    • 車椅子の有無(例:「折りたたみ式の車椅子を1台持ち込みます」)。
    • (※車椅子ごと乗車が必要な場合は、リフト付きの「福祉タクシー」を予約します)
  • ③ 体調・状況
    • 長距離の歩行は困難です」「杖(つえ)を使います」。
    • 「階段は昇降できません」など、具体的に伝えます。
  • ④ 希望のコース
    • 行きたい場所(例:金閣寺と二条城)。
    • 必ず「車椅子(シニア)でも無理なく回れるコースでお願いします」と付け加えます。
  • ⑤ 会社選びのキーワード:「京都 観光タクシー バリアフリー」「京都 UDタクシー」「京都 福祉タクシー」。
キャラクター
「料金だけ見ると『高い!』と思うかもしれませんが、バスや電車を乗り継ぐ“労力”と“時間”を考えたら、私は観光タクシーが一番『お得』な選択だと思います。予約時の『伝え方』が何より重要ですよ!」

3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選

『2. 最強の味方「観光タクシー」活用術』を予約したら、次は「どこへ行ってもらうか」ですよね。

「京都のお寺=砂利道(じゃりみち)」、これはもう仕方のないこと…と諦めていませんか?

あの、車輪が砂利に沈む「ザッ、ザッ」という重いを聞くだけで、介助する側もされる側も、心が折れそうになります。

でも、諦めるのはまだ早いんです。

京都市内にも、シニアや車椅子での拝観に、比較的「配慮」がある(バリアフリー対応が進んでいる)素晴らしい場所が、ちゃんと存在します。

この章では、「砂利をどう回避するか」「車椅子用トイレはあるか」という徹底したシニア目線で厳選した、「歩かない京都」の核となる3つのスポットをご紹介します。

もちろん「完全なバリアフリー」ではありませんが、観光タクシーと、この「情報の杖(つえ)」さえあれば、きっと安心して楽しめるはずです。

3-1. 金閣寺(車椅子トイレ・動線・砂利対策)

まず、京都観光の「王様」とも言える、金閣寺(鹿苑寺)です。

「あそこは、鏡湖池(きょうこち)の周りをぐるっと歩く『池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)』の庭園だから、砂利道で無理でしょう?」

その通り、一般の順路は、まさにその「砂利道」です。車椅子や杖(つえ)では、かなり厳しいルートになります。

ですが、ご安心ください。金閣寺には、一般の順路とは別に、「車椅子用の舗装(ほそう)ルート」がちゃんと用意されています。

拝観受付で「車椅子です」と申し出れば、この別ルートを案内してもらえます。

ただし、このルートは庭園を回遊するものではなく、金閣が一番美しく見える「鏡湖池の正面(あの、一番写真に撮りたい場所です)」まで舗装路で行き、そこから来た道を引き返す(逆走する)形になります。

行動のアドバイスとして、これを「全部見られなくて残念」と捉えないでください。
一番の見どころである、池に映る金色のまばゆいを、砂利と戦うことなく、一番良い場所で鑑賞できる。これぞ「歩かない」観光の知恵ですよね。

【金閣寺】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(駐車場、拝観受付手前など、複数箇所に設置されています)
駐車場からの距離 近い(観光タクシーなら、拝観受付のすぐ近くで降ろしてもらえます)
砂利対策 「車椅子用 舗装ルート」あり
(※拝観受付で申し出が必要です)
(※一般の砂利ルート(池泉回遊)とは異なります)
段差・スロープ △ 舗装ルートにも、一部「坂(スロープ)」があります。介助の方がいると安心です。
拝観のコツ ・「一般の順路(砂利)」には絶対に入らないこと。
・受付で必ず「車椅子用ルート」を教えてもらうこと。

3-2. 二条城(駐車場距離・スロープ・段差)

続いては、世界遺産・二条城です。徳川家の栄枯盛衰の舞台ですね。

ここの見どころは、何と言っても「二の丸御殿」の内部。「大政奉還(たいせいほうかん)」が発表された広間や、豪華な障壁画(しょうへきが)、そしてキュッキュッと鳴る「鶯張り(うぐいすばり)」の廊下です。

「でも、御殿の中なんて、車椅子で上がれるわけない…」

そう思いますよね。ですが、二条城はここが素晴らしいんです。なんと、御殿観覧用の専用車椅子(お城用)を、無料で貸し出してくれるんです!

ご自身の車椅子から、このお城用の車椅子に乗り換える必要はありますが、あの、古い檜(ひのき)の香りが漂う荘厳な空間を、車椅子で(介助者押しで)拝観できる…。これは、諦めていた方には、ぜひ体験していただきたいです。

ただし、ご注意いただきたいのが「お庭」です。
二の丸庭園は、残念ながら「砂利道」がメインです。舗装された一部の通路から眺める形になります。

行動のアドバイスです。二条城での目的は、「庭園(砂利)」ではなく「御殿(室内)」に絞りましょう。 駐車場(タクシー降車場所)から「東大手門(ひがしおおてもん)」をくぐり、唐門(からもん)のスロープを通って、二の丸御殿の車椅子貸出所へ。このルートが、シニア・車椅子の方の「正解」です。

【二条城】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(城内各所(休憩所など)に複数設置されています)
駐車場からの距離 比較的近い(第一駐車場から東大手門(入口)まで平坦です)
砂利対策 庭園は「砂利道」がメインです。
(※ただし、二の丸御殿の内部は、専用車椅子で拝観可能です)
段差・スロープ 「御殿観覧用の車椅子」を無料貸出あり(※要乗り換え)
・唐門(からもん)など、主要な門にはスロープが設置されています。
拝観のコツ ・目的を「二の丸御殿(室内)」に絞ること。
・御殿入口で「観覧用車椅子」を借りる(台数に限りあり)。

3-3. 三十三間堂(館内スロープ・拝観のコツ・トイレ)

最後は、個人的に「シニア・車椅子の方に、京都で最もおすすめしたいお寺」の一つ、三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)です。

なぜ、ここが最強なのか?
理由は、「ほぼ平坦(へいたん)」で「ほぼ屋内」だからです。

駐車場(観光タクシーなら目の前)から拝観受付を通り、本堂(ほんどう)の入口までは、ほぼ砂利のない舗装路(石畳)です。

最大の難関は、お堂に上がるための「数段の木の階段」だけ。
ですが、ご安心ください。受付で申し出れば、職員の方が「携帯用スロープ」をすぐに設置してくれます。

そのスロープを上がれば、そこはもう、別世界。
あの、千一体の千手観音(せんじゅかんのん)立像がズラリと並ぶ、全長120メートルの、長くて平らな「木の廊下」が待っています。

お堂の中は、ひんやりとした空気と、お香の香り。車椅子をゆっくり押しながら、一体一体のお顔を拝見し、その荘厳な雰囲気に浸る…。これほど、体に負担なく京都文化の神髄に触れられる場所は、他にあまりありません。

行動のアドバイスとして、ここは「雨の日」の観光コースとして、真っ先に覚えておいてください。 天候に一切左右されず、快適に拝観できる、シニア・車椅子旅行の「切り札」ですよ。

【三十三間堂】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(境内(本堂の向かい側など)に設置されています)
駐車場からの距離 近い(タクシーなら本堂入口のすぐ近くまで行けます)
砂利対策 ほぼ無し(入口から本堂まで、舗装路(石畳)がメインです)
段差・スロープ 本堂入口に「携帯スロープ」を設置してもらえます
(※拝観受付で必ず申し出てください)
堂内は「すべて平坦な木の廊下」です。
拝観のコツ ・シニア・車椅子に最も優しいお寺の一つ。
雨の日のプランに最適(ほぼ屋内のため)。
キャラクター
「金閣寺は『別ルート』、二条城は『専用車椅子』、三十三間堂は『スロープで堂内へ』。この3つの“合言葉”さえ覚えておけば、もう安心ですね。」

4. 注意点と回避策が必要なスポット

『3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選』では、比較的バリアフリー対応が進んでいる「安心」なスポットをご紹介しました。

ですが、「やっぱり、京都といえば清水寺の舞台が見たい」「あの赤い鳥居(伏見稲荷)を、一目だけでも」「嵐山の渡月橋(とげつきょう)も、外せないわよね」…

そうですよね。お気持ちは、痛いほど分かります。

ただ、正直に申し上げますと、これらの「超」有名スポットは、シニア・車椅子の方にとっては、最も難易度が高い「上級者向け」コースです。

「山」そのものに建てられていたり(清水寺・伏見稲荷)、観光客の「人混み」がすさまじかったり(嵐山)。

「行けば、なんとかなる」は、絶対に通用しません。

では、諦めるしかないのでしょうか?

いいえ。ここでも「観光タクシー」と「正しい知識(回避策)」があれば、最小限の負担で、その雰囲気の「一番おいしいところ」だけを味わうことが可能です。

この章では、「100%踏破(とうは)する」ことを諦め、「50%を快適に楽しむ」ための、現実的な「注意点」と「回避策」を、スポットごとに解説します。

4-1. 清水寺(坂対策と最寄降車ポイント)

清水寺。あの「清水の舞台」から京都市内を見下ろす景色は、まさに圧巻です。

問題は、そこに至るまでの「」。
バス停から向かう「五条坂」や、観光客でごった返す「産寧坂(さんねいざか)」「清水坂」は、車椅子はもちろん、杖(つえ)で歩くにも、非常に急で、長い坂道です。

【回避策】 観光タクシーで、許可済みの最寄り降車ポイントまで上がってもらいます。

観光タクシー(または介護タクシー)の運転手さんは、事前手配により、仁王門(におうもん)近くや坂途中の民間駐車場等まで入れる場合があります。

これだけで、あの急坂の大半をショートカットできます。

【注意点】 ショートカットしてもゼロにはなりません。
降車ポイントから本堂(舞台)までは、スロープや段差が残ります。車椅子一台がやっと通れる幅の場所もあります。

行動のアドバイス 清水寺は介助者2名以上が推奨の上級スポットです。予約時に運転手へ「車椅子で、最も負担の少ない降車場所はどこですか?」と必ず相談し、加えて公式サイトのバリアフリー案内も事前確認してください。

【清水寺】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(仁王門手前や境内の駐車場内など、複数箇所に設置)
駐車場(降車) 観光タクシーは最寄り降車ポイントまで乗り入れ可の場合あり(要・事前相談)
(一般車・観光バスは手前の駐車場利用)
砂利・坂 × 最大の難関。産寧坂・清水坂は急坂かつ人混みで通行困難。
(→上記回避策が必須)
段差・スロープ △ 降車地点から本堂まで段差・勾配が複数。
(公式のバリアフリー情報を要確認)
拝観のコツ 介助者2名以上が望ましい。
・タクシー運転手と導線を事前に共有する。

4-2. 伏見稲荷大社(どこまで無理なく行けるか)

外国人観光客にも大人気。あの朱色の「千本鳥居」がトンネルのように続く光景は、一度は見てみたいですよね。

ただし誤解が生じやすい点があります。
「千本鳥居」は平坦ではなく、「稲荷山(いなりやま)」の登山道(階段)です。

頂上(一ノ峰)まで往復すると約2時間。大部分が階段です。

【回避策】 「山は登らない」と割り切ること。
ゴールは麓の本殿千本鳥居の入口です。

観光タクシーなら本殿近くまで送迎可能な場合があります。本殿周辺は比較的平坦で、舗装路やスロープもあります。楼門や本殿の拝観、お守りの購入だけでも雰囲気は十分味わえます。

【注意点】
本殿脇から千本鳥居が始まります。入口の最初の数メートルは平坦なので、車椅子でも「鳥居のトンネルに入った」写真は撮れます
ただし直後から階段が連続します。奥社奉拝所へは階段回避不可です。

行動のアドバイス ゴールを本殿参拝入口での記念撮影に設定し、深追いしないこと。

【伏見稲荷大社】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(境内各所(駐車場・休憩所等)に設置)
駐車場(降車) ◎ 観光タクシーなら本殿に近いエリアでの乗降が可能な場合あり。
砂利・坂 千本鳥居は階段主体で車椅子不可。
・本殿周辺は舗装・スロープあり。
段差・スロープ ○ 本殿エリアはスロープ等でアクセス可能。
拝観のコツ 本殿参拝入口での撮影に目的を限定。
・「お山巡り」は行わない。

4-3. 嵐山(平坦区間と混雑回避の工夫)

「嵐山」は、お寺の名前ではなく「エリア」の名前です。

桂川(かつらがわ)にかかる「渡月橋(とげつきょう)」、世界遺産の「天龍寺(てんりゅうじ)」、そして有名な「竹林の小径(ちくりんのこみち)」。見どころが広い範囲に点在しています。

【注意点】 「人混み」と「坂」。
特に紅葉期は、車椅子にとって最大の障壁となるほどの混雑です。
また「竹林の小径」は写真で平坦に見えても、実際は長い急坂です。

【回避策】平日・午前中の訪問、②観光タクシーでスポット間移動、③「竹林の小径」は避ける(または入口のみ)。

幸い、渡月橋周辺天龍寺の境内(庭園)には比較的平坦な区間が多いです。

行動のアドバイス 運転手に「天龍寺で車椅子で最も入りやすい門(例:北門駐車場)」への送迎を依頼しましょう。
桂川の流れるを聞きながら渡月橋を眺め、天龍寺の曹源池庭園(※一部砂利あり、要確認)を楽しむ。竹林の坂を目指さず、平坦な中心部だけに絞るのがコツです。

【嵐山】バリアフリー・チェックリスト
項目 シニア・車椅子向け情報
車椅子用トイレ あり(JR嵯峨嵐山駅、京福嵐山駅、天龍寺内、渡月橋付近の公園など)
駐車場(降車) ◎ 観光タクシーは天龍寺の駐車場や渡月橋至近の乗降エリアを利用可(事前相談)。
砂利・坂 × 竹林の小径は急坂で非推奨。
△ 天龍寺庭園は一部砂利区間あり。
平坦な区間 渡月橋周辺と京福嵐山駅付近のメインストリートは平坦。
拝観のコツ 竹林の小径は避ける(または入口のみ)。
平日午前で混雑回避。
・スポット間もタクシー移動。
キャラクター
「『清水寺』『伏見稲荷』『嵐山』は、全部を見ようとすると必ず失敗します。『観光タクシーで入口まで』『本殿(舞台)だけ』と、賢く割り切ることが要点です。」

5. 【1日モデルコース】観光タクシーで巡る「歩かない」京都

これまでの章で、「観光タクシー」という最強の味方(『2. 最強の味方「観光タクシー」活用術』)と、「車椅子でも安心なスポット」(『3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選』)をご紹介してきました。

では、これらを組み合わせた「実際の一日」は、どのような流れになるのでしょうか?

朝、京都駅に着いた時の、あの雑踏やバス乗り場の長い列…。あの喧騒(けんそう)を横目に、予約しておいたタクシーの、ふわりとしたシートに深く身を沈める…。旅の始まりから、快適さがまったく違います。

ここでは、体力を最大限に温存し、「移動の疲れゼロ」を目指す、シニア・車椅子向けの具体的なモデルコースをご提案します。

各スポットでの「おおよその移動距離や段差」の目安も記載しますので、ご自身の体調と比べながら、シミュレーションしてみてください。

【1日モデルコース】の概要(観光タクシー5時間貸切コース・一例)
時間(目安) スケジュール 体力温存のポイント (車椅子目線)
9:30 京都駅(タクシー乗り場)出発 混雑する駅構内やバス停をスルー。ドア・トゥ・ドアで出発。
10:00-11:00
(滞在60分)
金閣寺(拝観) タクシーで入口へ。「車椅子用舗装路」のみを利用し、最小限の移動で拝観。
11:30-12:30
(滞在60分)
昼食(バリアフリー京料理店) タクシーで店の入口へ。テーブル席で、足腰を伸ばして休憩を兼ねる。
13:00-14:00
(滞在60分)
二条城(拝観) タクシーで入口へ。「二の丸御殿」の専用車椅子を利用し、室内をメインに拝観。
14:30 京都駅(到着・解散) お土産や休憩は、バリアフリーが完璧な「駅ビル(伊勢丹など)」を利用。

いかがでしょうか。

巡るスポットは「2箇所」と、非常にゆったりしています。

「え、たった2箇所?」と思われるかもしれません。
でも、バスや電車で移動していたら、この2箇所を回るだけで、夕方にはクタクタになっているはずです。

このコースの目的は、「数をこなす」ことではありません。「移動のストレスをゼロにし、一つひとつの場所での“滞在の質”を最大化する」こと。

金閣寺の金色の、二条城の檜(ひのき)の香り。それらを、疲れのない万全の体調で味わうことこそ、シニア世代の「贅沢(ぜいたく)」ですよね。

それでは、各ポイントを詳しく見ていきましょう。

5-1. 午前:京都駅 → 金閣寺(移動距離・段差目安)

朝9:30、京都駅のタクシー乗り場(またはホテルロビー)で、予約した運転手さんと合流します。

ここでの行動アドバイスは、乗り場を間違えないこと。
京都駅は非常に広く、タクシー乗り場も複数あります。事前に「八条口(はちじょうぐち)のりば」「烏丸口(からすまぐち)のりば」など、予約した会社との待ち合わせ場所を、正確に確認しておきましょう。

車に乗れば、金閣寺までは約30分。車窓から京都の街並みを眺めているうちにあっという間に到着です。

運転手さんは、一般の駐車場ではなく、拝観受付に一番近い場所で降ろしてくれます。
受付で「車椅子です」と告げ、「車椅子用舗装ルート」へ。金閣寺が一番美しく見える鏡湖池(きょうこち)の正面まで、スロープ(坂)はありますが、砂利に悩まされずに行けます。

ここで無理をして、一般の砂利ルート(回遊路)には絶対に行かないでください。「一番良い景色」を見たら、来た道を引き返す。これが鉄則です。

【金閣寺】での「歩かない」データ目安

  • タクシー降車場所 → 拝観受付
    • 移動距離:約20m
    • 段差:ほぼ無し
  • 拝観受付 → 金閣寺(鏡湖池 正面) → 受付(往復)
    • 移動距離:約150m(舗装路)
    • 段差:なし(ただし、途中に一部スロープ(坂)あり。介助者がいると安心です)
  • 車椅子用トイレ:あり(拝観受付手前、駐車場など)

5-2. 昼食:バリアフリー対応の京料理店(テーブル高・入口段差・トイレ)

金閣寺を11時頃に出たら、早めの昼食に向かいます。

ここが、観光タクシーの腕の見せ所。
「この近くで、車椅子でも入れる、美味しい京料理(湯豆腐など)が食べたい」と運転手さんにリクエストしましょう。

個人では見つけにくい「入口に段差がなく」「座敷(ざしき)ではなくテーブル席で」「車椅子用トイレがある(または、近くにある)」お店を、プロの知識で探してくれます。

もし、ご自身で予約しておく場合の行動アドバイスです。
一番確実なのは、「ホテルの和食レストラン」(例:ANAクラウンプラザホテル京都(二条城の近く)など)です。
ホテルなら、車寄せからロビー、レストランのテーブルまで、完全なバリアフリーが保証されており、多目的トイレも必ず完備されています。古い町家の京料理店のような「敷居(しきい)をまたぐ」といった心配が一切ありません。

【昼食場所】予約時の確認チェックリスト

  • 入口・店内:「入口からテーブル席まで、一切段差がない(またはスロープがある)」か?
  • テーブル:「テーブルの高さ」は、車椅子の肘掛け(ひじかけ)が入る十分な高さ(約70cm~)があるか?
  • トイレ:「車椅子対応の多目的トイレ」が、店内または同じフロアにあるか?
  • (タクシー運転手さんへ):「次の二条城にアクセスしやすい場所で」と伝える。

5-3. 午後:二条城 → 京都駅(お土産・休憩スポット)

昼食でゆっくり休憩したら、午後は「二条城」です。

ここでもタクシーは、東大手門(ひがしおおてもん)のすぐ近くの駐車場まで送ってくれます。
『3-2. 二条城(駐車場距離・スロープ・段差)』で解説した通り、ここでの目的は「二の丸御殿」です。受付で「御殿観覧用の専用車椅子」に乗り換えましょう。

ひんやりとした木の廊下の手触りを車輪で感じながら、大広間へ。あの「鶯張り(うぐいすばり)」のキュッキュッという独特のを、ご自身の車椅子の重みで鳴らしながら進む体験は、忘れられない思い出になるはずです。(※庭園は砂利が多いため、御殿を出たら深追いしないのが吉です)

14:00頃、二条城を出発。14:30には京都駅に戻ってきます。

最後の行動アドバイスです。お土産や休憩は、広大な京都駅ビルの中で迷ってはいけません。
駅直結の「JR京都伊勢丹(いせたん)」が、シニア・車椅子にとっての「オアシス」です。
お土産(食料品) → 地下1階(すべて平坦)
お土産(工芸品など) → 上の階
休憩(カフェ) → 各階のカフェ(例:6階「茶寮 都路里」など)
トイレ → 各階に、広くて清潔な「多目的トイレ」が完備されています。

お土産売り場で、お漬物(つけもの)や八ッ橋(やつはし)のほのかな香りが漂う中、新幹線の時間まで、空調の効いた完璧なバリアフリー空間で、ゆったりと最後の時間を過ごしましょう。

【二条城・京都駅】での「歩かない」データ目安

  • 二条城(タクシー降車場所 → 御殿入口)
    • 移動距離:約100m
    • 段差:なし(スロープで対応)
  • 二条城(二の丸御殿・内部観覧)
    • 移動距離:約200m(平坦な木の廊下)
    • 段差:なし(専用車椅子を利用)
  • 京都駅(お土産・休憩)
    • おすすめ場所:JR京都伊勢丹、または京都駅ビル専門店街「The CUBE」、ホテルグランヴィア京都。
    • トイレ:駅ビル・伊勢丹の各階にある「多目的トイレ」が最も清潔で使いやすいです。
キャラクター
「このコースなら、1日で2つの世界遺産を回っても、たぶん『まだ歩けるわ』と思うくらい体力が残っているはずです。疲れずに“一番良いところ”だけを見る。これが大人の京都観光ですよ。」

6. 予約のコツとよくある質問(FAQ)

さあ、これで「歩かない京都」の準備は、ほとんど整いました。

「観光タクシー」という最強の相棒(あいぼう)と、「無理なく楽しめる」厳選スポット。これだけでもう、旅の成功は半分決まったようなものです。

この最後の章では、その「予約」と「当日」に関する、シニア・車椅子旅行ならではの、細かくて、でも本当に大切な「よくある質問」にお答えしていきます。

「タクシーの予約は、一体いつするのがベストなの?」
「京都駅の、広くてきれいな車椅子トイレはどこ?」
「当日の天気が雨だったら、どうすれば…」
「障害者割引って、使えるのかしら?」

そうですよね。こうした「最後の不安」を一つひとつ解消しておくことが、当日の「安心感」に直結します。

特に、春の桜や秋の紅葉シーズンは、京都の街全体が混雑します。そんな時でも慌てず、スマートに旅をするための「知恵」を、ここでしっかり手に入れておきましょう。

6-1. 観光タクシーはいつ予約する?

「観光タクシーなんて、前日でも大丈夫でしょう?」
もし、そうお考えなら、それは少し危険かもしれません。

普通の流し(ながし)のタクシーとは違い、「バリアフリーを熟知したベテラン運転手さん」や、「車椅子ごと乗れるリフト付きの車」は、台数が限られています。

特に、気候が良くて混雑する春(桜)秋(紅葉)のシーズンは、真っ先に予約が埋まっていきます。

行動のアドバイスとして、旅行の日程(新幹線やホテル)が決まったら、その瞬間に、観光タクシーも予約してしまうこと。
「まだ早いかな?」と思うくらいが、シニア・車椅子旅行にとっては「ちょうど良い」タイミングですよ。

観光タクシーの予約時期(目安)
シーズン 予約時期の目安 注意点
ハイシーズン
(3月下旬~4月、11月)
1ヶ月~2ヶ月前 特に土日や祝日は、すぐに埋まります。日程が確定次第、即予約が鉄則です。
通常シーズン
(上記以外)
1週間~2週間前 平日なら比較的空いていますが、リフト付きの福祉タクシーなどを希望する場合は、早めのほうが確実です。

6-2. 車椅子用トイレはどこにある?(京都駅・百貨店等)

これは、足腰に不安のある方や車椅子利用者にとって、旅の生命線とも言える、最も重要な情報ですよね。

『3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選』でご紹介したお寺(金閣寺、二条城、三十三間堂)には、それぞれ車椅子対応のトイレ(多目的トイレ)が設置されていますので、ご安心ください。

問題は、「移動の拠点」となる京都駅や、「昼食」の場所です。

京都駅は、その巨大さゆえに迷いがちですが、「バリアフリーのオアシス」がちゃんと存在します。

行動のアドバイスとして、京都駅に着いたら、まずは「JR京都伊勢丹(いせたん)」のトイレを目指してください。
駅ビルのトイレよりも数が多く、清潔に管理されており、各階に「多目的トイレ」が必ず設置されています。

また、観光タクシーの運転手さんも、「このルートなら、あそこのホテルのロビーのトイレが一番きれいですよ」といった「プロの情報」を持っています。出発前に「トイレが心配なので」と一言伝えておくだけで、コースの途中で、必ず清潔なトイレがある場所に立ち寄ってくれますよ。

シニア・車椅子向け「トイレ・オアシス」リスト

  • 京都駅ビル
    • ◎ JR京都伊勢丹(各階):最もおすすめ。清潔で数も多い。
    • ◎ ホテルグランヴィア京都(ロビー階など):伊勢丹の隣。静かで落ち着いて利用できる。
    • ○ The CUBE(地下街)/ 京都ポルタ(地下街):設置されていますが、時間帯によっては混雑します。
  • 四条河原町エリア(昼食時など)
    • ◎ 京都髙島屋S.C. / 大丸京都店:百貨店のトイレは、やはりシニア・車椅子にとっての最強の味方です。
  • 観光スポット
    • 本記事で紹介した「金閣寺」「二条城」「三十三間堂」には、それぞれ車椅子対応トイレが設置されています。

6-3. 砂利に強いタイヤ・車椅子レンタルはある?

「砂利道(じゃりみち)問題」を、どうにか機材(きざい)で解決できないか?
あの、車輪が砂利に沈む「ズズズ…」という重い振動と、押す人の負担を考えると、当然そう思いますよね。

はい、存在します。
一部のNPO法人や介護ショップでは、通常より太いタイヤを装着した「砂利道・悪路(あくろ)用の車椅子」のレンタルを行っている場合があります。

また、『3-2. 二条城(駐車場距離・スロープ・段差)』のように、観光地側が「お城観覧用の専用車椅子(太いタイヤ)」を無料で貸し出しているケースもあります。

ただし、行動のアドバイスとしては、この「専用車椅子レンタル」に頼りすぎないことです。

なぜなら、『2. 最強の味方「観光タクシー」活用術』こそが、最強の「砂利道対策」だからです。
タクシーは、砂利道をショートカットできる「舗装路」や「最短ルート」を知っています。

「専用車椅子を借りて、砂利道を頑張って進む」よりも、「観光タクシーで、砂利道そのものを回避する」ほうが、何倍も賢く、快適だと思いませんか?

砂利道対策の選択肢

  • ① 観光タクシーで「砂利道を回避」する(推奨)
    • 最も確実で、体力を使わない方法。運転手さんが舗装路(スロープのある裏口など)を知っています。
  • ② 専用の車椅子をレンタルする
    • 京都市内のNPO法人や一部の介護ショップで、「悪路用車椅子」のレンタルを行っている場合があります。(例:NPO団体等に事前相談)
    • 台数に限りがあり、事前の予約と、受け取り・返却の手間が発生します。
  • ③ 観光地で借りる
    • 二条城の「御殿観覧用車椅子」のように、施設が専用のものを貸し出している場合があります。

6-4. 雨天時の回し方(屋内代替と乗降対策)

旅と「雨」は、切っても切れない縁(えん)ですよね。
雨の京都は、濡れた石畳(いしだたみ)や、苔(こけ)の緑が映えて、晴れの日とは違う風情があります。タクシーの車窓に流れる雨粒と、屋根を叩く静かな雨音も、また良いものです。

そう、ここでも「観光タクシー」が最強の味方になります。
バスや電車のように、傘(かさ)を差して、濡れたバス停で待つ必要がありません。運転手さんが、お寺の軒下(のきした)ギリギリまで車を寄せてくれるので、乗降(のりおり)時の負担が最小限で済みます。

行動のアドバイスとして、もし当日が雨予報なら、コースの「順番」や「中身」を変えてしまいましょう。

例えば、『3-3. 三十三間堂(館内スロープ・拝観のコツ・トイレ)』は、拝観の9割以上が「屋根のある本堂の中(平坦な木の廊下)」です。ここは、雨の日でもまったく問題なく、むしろ雨音が静かに響き、荘厳(そうごん)な雰囲気さえ漂います。

雨の日は、「金閣寺(屋外)」の優先度を下げ、「三十三間堂(屋内)」や「二条城(御殿内部)」をメインに据(す)える。こんな風に、柔軟に予定を変更できるのも、貸切タクシーならではの強みですね。

雨の日の「歩かない」京都・対策

  • ① 移動:観光タクシーなら「ドア・トゥ・ドア」。乗降時の濡れを最小限に抑えられます。
  • ② 屋内スポットを優先する
    • ◎ 三十三間堂:最強の雨天スポット。ほぼすべて屋内で完結。
    • ○ 二条城(二の丸御殿):御殿内部は屋根あり。
    • ○ 京都駅ビル(伊勢丹など):お土産や昼食に。完全屋内。
    • △ 金閣寺:メインの鑑賞場所は屋外(屋根なし)。
  • ③ 持ち物:車椅子用のレインコート(ポンチョ型)、介助者用のカッパ、そして「タオル(車に乗り込む前に車輪や体を拭く用)」を、タクシーに常備しておくと万全です。

6-5. 混雑時間帯と待ち時間の目安

京都の「もう一つの壁」、それは「人混み(ひとごみ)」です。
特に、桜や紅葉のシーズンの、土日のお昼頃(10時~15時)。あの、人の波にもまれるような喧騒(けんそう)の中、車椅子や杖(つえ)で進むのは、本当に大変です。

【回避策】は、たった一つ。「その時間を、丸ごと避ける」ことです。

これこそ、平日に旅行の計画を立てやすい、私たちシニア世代の「特権」ですよね。

最強の行動アドバイスは、「平日の、朝イチ(午前9時)」です。
多くのお寺が9時に開門します。観光タクシーで9時ぴったりに金閣寺の門の前にいれば、まだ観光バスが到着する前の、静かで、澄んだ空気の中を拝観できます。

人混みの中で「待ち時間」を気にするのではなく、人より早く動き出すことで、「待ち時間ゼロ」の快適な観光を手に入れましょう。

混雑回避のポイント
項目 対策
最も混雑する時間 午前10時 ~ 午後3時
・(特に)桜と紅葉シーズンの土日・祝日
最も空いている時間 平日(月~金)
開門直後(午前9時~10時)
・閉門間際(午後4時以降 ※ただし冬は暗い)
シニア・車椅子の戦略 「平日の、朝イチ(9時)」を狙う。
・観光タクシーで9時開門と同時に最初のスポットに入り、混雑が始まる11時頃には、もう次の場所へ移動(または昼食)する。

6-6. 障害者割引・介助者割引は使える?

最後は、とても現実的で大切なお金のお話、「割引」についてです。

結論から申し上げますと、多くの主要寺社で適用されています

京都の主要な寺社仏閣(金閣寺、二条城、三十三間堂など)では、「障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳など)」を提示することで、拝観料の割引が適用される場合があります。

さらに、手帳の種類や等級(例:1種など)によっては、「ご本人様」だけでなく、「介助者1名」まで無料または割引になるケースが多いです。

行動のアドバイスは、「手帳の原本(コピー不可)」を必ず携帯し、拝観券を買うに窓口で提示すること。
※タクシー会社の「障害者割引」はメーター料金のみ対象など条件が分かれることがあります。観光タクシーの貸切料金に適用されるかは、予約時に会社へ要確認。

障害者割引・介助者割引のポイント
項目 内容
必要なもの 各種「障害者手帳」の原本(コピー不可)
対象者(例) ・手帳をお持ちのご本人様
・介助者 1名(※手帳の種類・等級によります)
割引内容(例) ・ご本人様「無料」または「半額」
・介助者1名「無料」または「半額」
対象スポット(例) 金閣寺、二条城、三十三間堂、清水寺、銀閣寺 など
(主要観光寺社の多くが対応)
使い方 ・拝観券売り場で、支払前に手帳を提示する。
キャラクター
「雨の日は『三十三間堂』、混雑対策は『平日の朝イチ』、そして『障害者手帳』は忘れずに。この3つの知恵が、当日の快適さを大きく左右しますよ。」

7. まとめ・実行チェックリスト

「足腰が不安だから」「車椅子だから」と、諦(あきら)めかけていた京都旅行。

この記事を最後まで読んでくださった今、「工夫次第で、私たちにも京都は楽しめるかもしれない」と、希望のが差してきたのではないでしょうか。

そうなんです。京都は、決して「歩ける人」だけのものではありません。

大切なのは、「“歩かない”という、賢い選択」をすること。

バスや電車を乗り継ぎ、人混みと砂利道(じゃりみち)に体力を奪われる、今までの「常識」を捨てること。

その代わりに、
1. 「観光タクシー」という最強の翼(つばさ)を手に入れること。
2. 「バリアフリー対応の寺社」3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選)を厳選すること。
3. 「平日の朝イチ」という、一番空(す)いている時間を選ぶこと。

この3つの鉄則を守るだけで、あなたの京都旅行は「苦行」から「快適な大人の旅」へと生まれ変わります。

お堂に漂う、あの静かなお香の香りや、鶯張(うぐいすばり)の廊下がきしむ、あの独特の
それらを、疲れやストレスとは無縁の、万全の体調で味わうこと。

それこそが、50代・60代から始まる、本当の意味で「贅沢(ぜいたく)」な京都の楽しみ方だと考えます。

最後に出発前の「実行チェックリスト」をご用意しました。これさえ確認しておけば、もう何も怖くありません。

さあ、次のお休みに、憧れだった京都へ、出かけてみませんか。

【出発前に必ず確認!】「歩かない京都」実行チェックリスト

  • 観光タクシー(バリアフリー対応)は予約しましたか?
    最優先事項。日程が決まったら即予約を。「車椅子利用」「歩行困難」と必ず伝えること)
  • 巡るスポットは「厳選」しましたか?
    3. 【車椅子OK】バリアフリー厳選スポット3選をメインに。清水寺などは「回避策」を徹底)
  • スケジュールは「平日・午前中」をメインにしましたか?
    (混雑と待ち時間を避ける、最強の戦略です)
  • 「障害者手帳(原本)」はカバンに入れましたか?
    (多くの寺社で割引が適用される場合があります。原本提示が求められます。コピー不可)
  • 「車椅子用トイレ」の場所は、だいたい把握しましたか?
    (まずは「京都伊勢丹」と「各寺社の駐車場」と覚えておけば安心です)
  • 雨天の場合の「プランB(代替案)」はありますか?
    (例:屋外の金閣寺 → 屋内の「三十三間堂」や「二条城(御殿)」をメインにする)

快適に京都を巡る「自信」がついたら、次は「どこに泊まるか」「何をもっと楽しむか」も気になりますよね。
当ブログでは、シニア世代が「快適に」楽しめる、旅とグルメの情報をこれからもご紹介していきます。

キャラクター
「『観光タクシー』と『スポットの厳選』、そして『平日の朝イチ』。この3つが、京都を快適に楽しむための“三種の神器”ですね。ぜひ、諦めていた京都旅行を実現させてください。」